福岡二文字は茎に「この字を刻むのが特徴の一文字派の作。知将・ 毛利元就の侃万である。

元就の前半生は不遇で、少年のうちに両親を亡くし家臣に知行を乗っ 取られてしまうと いう悲惨なものだった。だが家督を継いでいた兄とその嫡男が急逝し、 二七歳で毛利家の当主となると、あらゆる知略を使い 勢力を拡大し、 ついには安芸一国を手中にした。あるいは少年期の逆境 がこうした気骨を作ったのかもしれない。

元就の野心家ぶりを示す逸話として元服前の元就が厳島神社に参拝した際の逸話がある。

この時、家臣は元就が安芸 一国の主になれるように祈願したが、元就 は「天下の主を目指す気概があって初めて 一国が取れる。最初から 一国 しか望まぬ者は一国も手に入れられない」と家臣を諌めたという。 ちなみに福岡 一文字が納められているのもこの厳島神社である。